長井線リポート(36) 新幹線とマッチ箱
赤湯駅の跨線橋から4番ホームに降りると、長井線の列車は暖機運転をして待機している。マッチ箱と呼ばれたローカル線の車両が、新幹線と並んで見られるのは全国的にもとても珍しい光景なのである。
新幹線はいかにも金属的で洗練された美しさがあり、先端技術の塊のようである。それに比べると長井線の車両は古臭くてカッコ悪い。けれども窓を開ければ、顔いっぱいに風が吹き込み、光が飛び込んでくる。子供であっても靴を脱いで座席シートに立てば、大人と同じ高さから車窓を流れる景色を見ることができる。さらにレールをわたる音と振動が、体中に響き渡るのである。「キシャ、ガタンガタン、ポッポー」という子供たちの歓声は、マッチ箱列車からこそ生まれるものだと思う。
白鷹町出身で詩人でもある芳賀秀次郎さんが、昭和47年に「わがうちなる長井線」と題したエッセイで、「ぼくらはこれをマッチ箱と呼んでいた。これには本線を走っている立派なボギー車との比較による、やや軽侮の感じもないわけではなかった。しかし、このマッチ箱という呼名には、もっと素朴であたたかい親愛の気持ちがこめられていた。」と書いている。
フラワー長井線は、子供たちにとっては今でも夢の世界に誘うマッチ箱なのではなかろうか。山形鉄道では、「もっちぃ親子・孫乗り放題きっぷ」や「土・休日フリー切符」を販売している。子供や孫と一緒に愛らしいマッチ箱列車の旅を楽しんでみて欲しい。子供たちの内なる世界に、両親と祖父母との想い出と共に果てない軌道の姿が刻まれるように。
「わがうちなる長井線」はこちらからどうぞ ⇒
http://samidare.jp/orada2/note?p=list&c=418169