長井線リポート(24) 不思議に感動できる場所
松川橋梁を渡り切ると下り坂となり、列車の振動も軽やかで心地よい。ブラタモリが大好きなのは崖と縁(ヘリ)であるが、松川橋梁から梨郷駅までの区間は、置賜盆地の北の縁を走る区間であり、長井線の中でも特異な風景が楽しめる区間である。今回は写真3枚をご覧いただきたい。
とりあえず北側の風景を楽しむことにする。松川橋梁を渡ってしばらくすると、北側の縁から樹木の枝が覆いかぶさって来る。山形鉄道の方が「(自然災害から線路を守るために植えられた)鉄道林がある」と言っていた場所が、この辺りなのかもしれない。
旧長井街道の踏切辺りまでは旧道と並行して走る。豪農の館風の屋敷が見られる。中には蔵が何棟か建てられ、門付きの家も見ることができる。南陽市史によれば、梨郷地区は大正中期から「丸リ白菜」が全国的に有名で、関東や関西方面に貨車で運ばれて行ったというが、その名残であろうか。
線路の南側に目をやれば、国道113号線が走っている。この先には最上川があり、その橋の名前は「幸来橋」。山形新聞やまがた橋物語によれば、初代の幸来橋は1887年(明治20年)に建設され、現在は3代目になるという。橋の建設に奔走した梨郷の松木慶太氏が「幸せが来るように」との願いを込めて応募した名称が採用されたのだという。
崖と縁の鉄道林を抜け、新旧の街道に挟まれ、街道筋の暮らしぶりも味わえる約1.2キロは、大人(としょり)が不思議に感動できる場所だった。やっぱり乗ってみなけりゃわからないものである。