長井線リポート(7) 鉄橋をわたる時
列車は、フラワー長井線きっての撮影スポット・最上川橋梁に差し掛かった。1887年(明治20年)より東海道本線木曽川に掛けられていたものを、移設したものである。日本最古の現役鉄道橋として知られ、2008年(平成20年)に土木学会選奨土木遺産に、翌2009年には近代化産業遺産に選定された。さらに2015年(平成27年)には、「やまがた景観物語 おすすめビューポイント」にも選定されている。
この鉄橋は、当時の荒砥町を中心とした人々の夢だった。舟運から鉄道の時代へという変革の波に立ち向かい、故郷の将来を懸けた運動の果てに実現したものだ。1923年(大正12年)4月22日、この鉄橋を一番列車が黒煙を吐きながらわたる姿を、村人はどんな思いで迎えたのであろうか。
あれからもうすぐ100年になる。どれだけ多くの人々が、この鉄橋をわたったのだろう。故郷を離れる寂しさと、夢に向かって進みたいとする高揚感、帰省時の何とも言えない懐かしさと安堵感を、この鉄橋をわたる度に味わったのではないだろうか。車両の前面に立ち、ダブルワーレンの回廊をくぐらなければ、こんな感慨に浸ることもなかったであろう。長井線を訪れてくれた旅人は、鉄橋をわたる時に何を感じるのであろうか、教えて欲しいものだ。
コノハシハ ムラビトタチノ ユメダッタ
コノハシヲ ワタッテ ボクハ ムラヲハナレタ
コノハシヲ ワタッテ ワタシハ フルサトニ カエッタ
コノハシハ ナニヲ ツナイデ イタノダロウ
【おらだの会】最上川堤防からの写真は、山形鉄道(株)提供