成田駅の宝物(18) 国土美化のホーロー看板
「よごさぬように美しく」と書かれたホーロー製の看板。「そこら中で見かけるようなこの看板が宝物?」と思われる方も多いかと思いますが、モノにはすべて物語があるものです。
この看板にある「日本観光協会」は、昭和34年3月の日本観光協会法によって設立された特殊法人。国際観光事業の振興と観光事業の健全な発達に寄与することを目的として設立されたものですが、昭和39年4月の同法改正によって(社)日本観光協会に改組されています。
国土美化運動については、昭和39年度運輸白書には、「観光資源の保護の一態様として・・・(略)…国土美化の問題がある。古くは昭和10年頃鉄道省の外局である国際観光局の提唱により、また戦後には(社)全日本観光連盟、旧日本観光協会、(財)新生活運動協会(注:現在の「あしたの日本を創る協会」)、地方公共団体等により国土美化運動が推進されてきた。なお、国土の美化については昭和37年4月には衆議院本会議で国土を美しくする決議がなされた」とあります。
とすると、この看板は昭和34年から39年4月までの間に、全国的な運動の一環として掲示されたのではないかと思われます。この時期は、昭和38年に観光基本法が制定され、翌39年10月には東京オリンピックが開催。国全体が行け行けドンドンの熱気の中にあったと思われます。こうした時期に、「よごさぬように美しく」を国民運動として進めていたことに驚かされます。私たちはコロナ禍の中でも、観光客誘致や2020東京オリ・パラの夢を追いかけていますが、忘れてはならないものがあることをこの看板が教えているような気がします。